ドイツの地元紙ですが、先日ストリートミュージシャンの旦那が新聞に載りました。
あ、悪いことでじゃないですよ?笑
ある日の出来事
ドイツの真ん中、ハノーファーの近くにあるHildesheim(ヒルデスハイム)という街での出来事。
ストリートミュージシャンである旦那は、この街でも何度か演奏したことがあります。
この日もいつもの通り、通りの一角に座り音楽の演奏を始めました。
通行人が旦那の演奏に群がる、ということはありませんが
少し足を止め、床に置いたギターケースにコインを投げていってくれます。
近くのベンチに座り、休憩がてら演奏を楽しんでくれている人もいます。
そんな中、10分ほどすると2人の女性が旦那の元にやって来ました。
まだ曲を演奏していた旦那を無理やり止め、1言。
「アンプは禁止だから。」
ドイツ固有のお役所「秩序局」
彼女たちはOrdnungsamt(オルドヌングスアムト)と呼ばれる、日本語に直訳すると「秩序局」の役人でした。
日本にはない役所ですが、ドイツの秩序局はその名の通り街の秩序を守ることを仕事とした役所です。
ストリートミュージシャンである旦那は、この秩序局から文句を言われることが時々あります。
原因は、もちろんアンプ。
アンプ禁止の街は多い
ドイツのほとんどの街では、道路でアンプを使用することは禁止されています。
理由は、うるさいから。
アンプをギンギンに慣らして演奏して周りを困らせた人が、過去に居たんでしょうね、、、。
ただ、旦那はなにも道端でうるさくするためにアンプを使っているわけでありません。
アンプは、歌声と楽器のハーモニーを整えるためには欠かせないものなのです。
アンプ禁止に喝!
街づくりの一環として、ストリートミュージシャンは街からはむしろ歓迎される事の方が多いんです。
ドイツではどんな小さな街でも歩行者天国があるのがほとんどで、街の真ん中にあるマルクト広場では昔ながらの市場が週に1回〜2回開催されます。
八百屋や肉屋、また洋服や小物など様々な出店がある市場などの生活の場に素敵な音楽があることを、多くの人が望んでいます。
またストリートミュージックは、観光のためにも利用されています。
街がストリートミュージシャンを必要としていることは、秩序局も把握していることなのですが、、、
なぜか良質な音楽を作り出すために必要なアンプは、依然として禁止されたまま。
アンプが大きな音を出して近所迷惑になる可能性は否定できませんが、、、
でも、考えてもみてください。
トランペットは?
ドラムセットは?
これらの楽器はアンプに繋がなくても大きな音が出ますが、道路上では特に禁止されていません。
また、ドイツの街で時々問題となる東欧出身のアコーディオン奏者(クオリティが低く、同じ曲を延々と繰り返す)も、人々を苛立たせることはあれアンプは利用していないという理由で禁止されることはないのです。
アンプ禁止反対を以前から訴えてはいるものの、、、
旦那は以前から、アンプについて注意してきた様々な街の秩序局の役人に問いかけ続けてきました。
まずは
「住民からの苦情があったのか?」どうか。
もし音楽に対し近隣住民からの苦情があれば、旦那はすぐに場所を移動します。
(が、苦情が原因で秩序局に注意されることはほぼゼロ。)
もし住民からの苦情がないのであれば、「なぜ秩序局は旦那を止めるのか?」
住民から苦情がない。むしろ住民は旦那の演奏を楽しんでいるのに、なにが問題なのでしょうか。
秩序局の回答は、こうです。
『アンプは禁止というルールだから。』
アンプを注意してくる秩序局(すべての街で起こるわけではありませんが)は、『ルールだから』という理由で旦那の演奏を止めようとします。
そんな時旦那は、役所の人に説明します。
「自分は音楽を専門的に学んだプロのストリートミュージシャンだ。
自分の音楽に対して苦情もなく、人々も楽しんでいるのに、もしアンプが原因で演奏を止めなければいけないのであればそのルールが間違っているのではないか。」
「もし騒音が原因でストリートミュージシャンを制限したいのであれば、騒音測定器の導入を考えてくれないか?」
、、、実際に騒音測定器を導入してくれた自治体はまだありませんが、それでも旦那の言うことを理解してくれる秩序局の役人もいます。
そもそも失礼な態度を取ることは許されるはずがない
最も問題なのは公務員であることを笠に着て、旦那に対して失礼な態度を取る秩序局の役人がいることです。
旦那はアンプに対する自分の考えを意見する時、攻撃的な態度は取りません。
まずはにこやかに挨拶をし、それから自分の名前と職業を名乗ります。
しかし秩序局の役人の中には旦那に威圧的な態度を取ったり、演奏している真っ最中に曲を止め、挨拶もなしに怒鳴ってきたりする人がいるのです。
見ていた人が新聞社を紹介してくれた
旦那がその日訪れていたヒルデスハイムの秩序局の役人も、旦那に対して非常に失礼な態度で接していました。
その時に旦那の演奏を楽しんでくれていてた人が秩序局の役人とのやりとりを見て、主張を新聞社に持ち込むことを提案してくれました。
旦那とその人はすぐに新聞社に行き、記者は興味深く旦那の話を聞いてくれたそうです。
こうして、旦那の顔写真入りの記事は「Hildesheimer Allgemeine Zeitung」という地元紙に載りました。
ドイツ語な上、有料の新聞なのでここに載せることは出来ませんが、、、。
長年訴え続けてきたことが公の場に出て、旦那はとても誇らしげでした。
この記事をきっかけに演奏の仕事が入った
全く予想していなかったことですが、この地方紙の記事を読んだ人が旦那にコンタクトを取ってきました。
『新聞記事を読み、興味が湧いたのであなたのホームページを見ました。とても素敵な音楽なので、ぜひ私達の金婚式のお祝いで演奏してくれませんか?』
仕事の依頼です。
こういうこともあるのかと、旦那も驚いていました。
まとめ
今回の記事では
アンプ禁止と秩序局の失礼な態度についての旦那の意見がドイツの地元紙に載った話 を書きました。
秩序局の役人にも、旦那の演奏を楽しんでくれたり親身になって話を聞いてくれる人もいます。すべての人が失礼な態度を取るわけではありません。
ただ、なぜか人の話を聞きもせず高圧的な態度で接してくる残念な秩序局の役人も中にはいます。
そもそも、秩序局には何の権限もありません。
例えば旦那が秩序局の言ったことを無視して演奏を続けたとしても、秩序局はその事に対して何の権力も持ちません。
出来る事と言えば、一般市民のように警察に連絡する事くらい。
秩序を守るために威厳を示すのも大切なことなのかもしれませんが、それでも挨拶もなしに曲の真っ最中に割り込んできて「アンプは禁止だ」と怒鳴るのは失礼なことです。
旦那は秩序を乱しているわけではなく、むしろ道行く人は旦那の演奏を楽しんでくれているのに。
「アンプ禁止」というルールがそこにある理由も分からなくもないのですが、それでもすべてのアンプを禁止するのではなく騒音測定器を使うなどの別のルールが必要なのではないか、という話でした。
おわり!