2017年のドイツ連邦議会選挙の結果が開票されました。
この記事では
今回のドイツ選挙の結果と、今後予想される展開についてまとめています。
ドイツの政党に関する詳しい説明はこちらの記事から↓
選挙結果 (投票率)
ドイツ時間2017年9月24日21:10現在
キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU):33%
ドイツ社会民主党(SPD):20.7%
ドイツのための選択肢(AfD):13%
自由民主党(FDP):10.6%
左翼党(Linke):9%
同盟90/緑の党(Grüne):8.9%
その他:4.8%
選挙結果(議席数)
ドイツ時間2017年9月24日21:10現在
※()内は現在の議席数との比較
キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU):239(-71)
ドイツ社会民主党(SPD):150(-43)
ドイツのための選択肢(AfD):94(ー)
自由民主党(FDP):77(ー)
左翼党(Linke):65(+1)
同盟90/緑の党(Grüne):65(+2)
全議席数:690(+60)
選挙結果概要
今回の連邦議会選挙での国民投票率は75.6%。
2013年に行われた連邦議会選挙より国民の投票率は増え、今回の選挙に対する国民の関心の高さがうかがえた。
二大政党の大きな敗北
現在の議会で第一党の、アンゲラ・メルケル率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が33%の投票率で、引き続き第一党に。
CDUと並んで二大政党と呼ばれるドイツ社会民主党(SPD)は20.7%の投票率で、こちらも第2党の位置を守った。
ただ、この二大政党は前回の選挙より大幅に議席を減らし、大きな敗北を期す結果となった。
この選挙結果は、国民が今までのCDU/CSUとSPDによる大連立に満足していないことを示している。
極右政党AfDが二大政党に続き第3党に
注目すべきはドイツのための選択肢(AfD)が13%の投票率で、CDU・SPDの二大政党に続き第3党の地位を獲得したこと。
AfDは既に複数の州議会に議席を持つが、連邦議会(国政)に議席を持つのは今回が初めて。
政権2野党の議席数はほとんど変わらず
今まで議会で野党として活動していた左翼党(Linke)と同盟90/緑の党(Grüne)は、それぞれ9%と8.9%という投票率で議席数もほぼ変わらない結果となった。
議会入りは果たしたものの、今回初めて議席を獲得したAfDには及ばない投票率となった。
前回の選挙で姿を消したFDPが国政復帰
前回2013年の選挙で阻止条項(投票率5%)を達成できずに国政から姿を消した自由民主党(FDP)が、10.6%の投票率で国政復帰を果たした。
各党の選挙結果概要と今後予想される展開
キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)
今回33%の投票率で第一党の地位を守ったCDU/CSUだが、310あった議席が239議席(-71議席)になるなど、一番多くの議席を失う結果となった。
今後は連立パートナーを探すことが1番の課題だが、ドイツ連邦首相は党首であるアンゲラ・メルケルが4期目を務めることになりそうだ。
ドイツ社会民主党(SPD)
SPDも20.7%の投票率で第2党の地位を守ったが、193あった議席が150議席(-43議席)になるなど、敗北を味わった。
投票率の目標を30%としていたSPDにはショックが大きかったようで
特にSPD党首であり「メルケルの次に首相の座に近い」とされていたマルティン・シュルツの混乱ぶりは大きい。
選挙結果の開票中にもかかわらず、シュルツは現政権で行っているCDU/CSUとの連立(大連立)を拒否した。
自ら与党を捨て野党を選ぶという事は、次回2021年の連邦議会選挙を見越しての発言だと思われる。
ドイツのための選択肢(AfD)
13%の投票率を集め、初の連邦議会入りを果たした極右政党AfD。
今回の選挙での一番の勝者となった。
特に難民が多く押し寄せた南ドイツと東ドイツで多くの票を獲得しており、現政権の難民政策への不満がAfDの議会入りを後押ししたものと思われる。
ただ他の政党は露骨にAfDに嫌悪感を示しており、今後議会では孤立する可能性もある。
自由民主党(FDP)
前回選挙での敗北から4年。
10.6%の票を獲得し、FDPも大きな勝利を収める結果となった。
前回の選挙でCDU/CSUに流れていた票が戻って来たものと思われる。
議会では今後、元々の連立パートナーであるCDU/CSUと連立を組み与党として活動することになる可能性が高い。
左翼党(Linke)
投票率ではGrüneと僅差、議席数を1増やす結果となったLinke。
今後も野党として活躍する可能性が高い。
同盟90/緑の党(Grüne)
今回の選挙では、前回の63議席から2議席増やす結果となった。
選挙直前に起こった「卵に殺虫剤混入のスキャンダル」が追い風となった可能性がある。
今後はCDU/CSUとの連立が注目されるが、連立の条件として同党が主張する環境保護の項目を条件に出してくるだろう。
連立の可能性
ドイツの連邦議会では1党で過半数の票を集められなかった場合、議席の過半数となるように他の政党と連立を組む必要があるが
選挙を終えた今、どの政党がどの政党と連立を組むのかが大きな焦点となっている。
実際の連立に関する政党同士の話し合いは明日以降に行われる予定だが、連立の可能性は以下の2通りが考えられる。
- 「黒赤連立」:キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)とドイツ社会民主党(SPD)の二大政党による大連立
- 「ジャマイカ連立」:CDU/CSU、自由民主党(FDP)、同盟90/緑の党(Grüne)3党による連立。政党のシンボルカラー(黒・黄色・緑)を取って「ジャマイカ連立」と呼ばれる。
CDU/CSUは伝統的に、左翼党(Linke)やその他極右政党(今回の場合はAfd)との連立は拒否している。
またCDU/CSUとAfdを除いたSPD、FDP、Linke、Grüneの連立の可能性も無くはなかったが、過半数を超えられない(49.2%)ので、この連立の可能性も消えた。
残るは現在の赤黒大連立か、3党によるジャマイカ連立だが
次の政権での赤黒連立には、SPDが拒否の立場を示している。
したがって現在一番有力視されているのはCDU/CSU、FDP、Grüneによるジャマイカ連立の可能性だが
逆を言えばCDU/CSUにとってはこの連立しか方法がなく、他の2党は連立の条件としてCDU/CSUから有利な条件を引き出そうとするだろう。
もし連立が成立しなかった場合、連邦議会選挙のやり直しもあり得る。
過去のFDPや今回のSPDで、CDU/CSUと連立を組むとその後選挙で不利になるというジンクスが出来てしまった。
メルケルにあと4年、ついてきてくれる政党は現れるのだろうか。
まとめ
今回は
2017年ドイツ連邦議会選挙の結果と今後予想される展開について、ドイツのNHKであるARDの情報をまとめました。
アンゲラ・メルケルが4期目のドイツ首相になることはほぼ確実ですが
これから注目されるのはやはり「連立相手」についてでしょうね。
前回の選挙では議会に5政党しか居なかったのが、今回の選挙では7政党にまで増えました。
今までの与党が強すぎた結果だとは思いますが
議会内に多くの意見が生まれるのは、決して悪い事ではありません。
私に選挙権はありませんが
現在暮らす第二の故郷として、今後の政権にも期待したいものです。
おわり!
ドイツの政党についての詳しい説明はこちらから↓
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