先日、このようなニュースを見つけました。
トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領が今年9月に控えたドイツ国内の総選挙に関し、ドイツに住むトルコ系住民に「主要政党に投票しないように」と呼びかけたものです。
この件は、一国の大統領が他国の内政に干渉したと受け止められています。
日本ではそこまで大きく取り上げられていませんが
このニュースは私に、現在世界で問題となっているイスラム系難民が将来引き起こすかもしれない問題について考えさせました。
今回の記事では
「トルコ大統領がドイツ内政に干渉」のニュースから感じるイスラム系難民の恐怖について書きます。
- ドイツにはトルコ系住民が非常に多い
- ドイツにトルコ系住民が多い理由
- ドイツにとってトルコ系住民は決して無視できない存在
- 今回ニュースとなった「トルコ大統領によるドイツ内政干渉」がドイツ政治に及ぼす影響は限定的と思われるが、、、
- 「トルコ大統領がドイツ内政に干渉」から見るイスラム系難民の問題
- 国が個人の信仰や生き方を変えるのは不可能
- まとめ
ドイツにはトルコ系住民が非常に多い
ドイツ国内にはトルコ系ドイツ人が非常に多いです。
2013年の統計によると
約300万人~350万人のトルコ系ドイツ人*1がドイツ国内に住んでおり
この数はドイツ人口の3.7%~4.2%に当たります。*2
参考として
日本国内の移民として最も多い在日韓国・朝鮮人の数は、2016年1月時点で約48万5千人*3、割合で言うと全人口の0.3%ほどです。
比べてみると、ドイツにいるトルコ系住民がいかに多いかお判りいただけると思います。
ドイツにトルコ系住民が多い理由
戦後1950年代から始まった高度経済成長によりドイツ国内の労働力が不足したことを受け
1961年、ドイツはトルコとの間に「Anwerbeabkommen(労働者受け入れ協定)」を結びます。
Gastarbeiter(ガストアルバイター=出稼ぎ外国人労働者、直訳だと「ゲスト労働者」)と呼ばれるこれらの外国人労働者は、当初はいつかは本国に帰るものとみなされていましたが
多くのトルコ人労働者はその後トルコから配偶者や子ども達、両親をドイツに呼び寄せ、ドイツに定住することを選びました。
現在ドイツにいるトルコ系ドイツ人の多くは、ゲスト労働者としてドイツに来た祖父母を持ちドイツで生まれた両親を持つトルコ系ドイツ人3世です。
ドイツにとってトルコ系住民は決して無視できない存在
ドイツに300万人ほどいるトルコ系ドイツ人のうち、約半分がドイツ国籍を持っており、約10%が両方の国籍を持っています。
つまり約98万人のトルコ系ドイツ人がドイツで投票権を持っており、この数はドイツ国内の全有権者の中で1.5%の割合を占めています。*4
数だけ見ると多くないようにも見えますが、これらトルコ系の有権者はドイツにとって決して無視できない存在です。
今回ニュースとなった「トルコ大統領によるドイツ内政干渉」がドイツ政治に及ぼす影響は限定的と思われるが、、、
エルドアン大統領がトルコ系ドイツ人に向けて「ドイツの主要政党には投票するな!」と言ったとはいえ
今回に限って言えば、トルコがドイツの内政に及ぼす影響は限定的だと思われます。
ただ
トルコがイスラム教国であることと世界中でイスラム系難民が大きな問題となっていることを踏まえると
今回の「トルコによるドイツ内政干渉」のニュースは私に増え続けるイスラム系難民に対する恐怖を起こさせました。
「トルコ大統領がドイツ内政に干渉」から見るイスラム系難民の問題
元々キリスト教信者の多いドイツですが
イスラム教信者は2番目に多く、その数は約380~430万人(4.6%~5.2%)に上ります。
イスラム教信者の多いトルコ人がドイツ国内に約300万人ほどいることを考えると、トルコ系住民がドイツ国内のイスラム教徒の数を押し上げているのは明確です。
イスラム教を国教として定める国は世界中で40ヵ国以上あると言われ、国教でなくてもイスラム教徒の割合が高い国は多いです。
現在多くの難民を出しているシリア、イラク、アフガニスタンなど国も、イスラム教徒が国民の大多数を占めています。
そしてイスラム教国に特徴的なのは、政治と宗教が切り離されていない国が多いということです。
トルコの独裁者となり果てたエルドアン大統領も
「少なくとも子どもは3人持つべきだ」「中絶は殺人」という発言を行ったり、モスクや学校の近くで酒を売ることを規制したりと宗教教育を強化しています。*5
個人のみならず国までもイスラム教の背景を持つこれらの難民を、例えば日本やドイツなどのイスラム教徒が少ない国が受け入れると、どうなるのか。
まずよく言われることとして
日本やドイツなど少子高齢化の問題を抱えている国では自国民は子どもを産まないので減っていく一方、子どもをたくさん産むイスラム教徒の子どもの数は増えていきます。
また、難民側の感情として
移住した非イスラム教国の、イスラム教への不寛容さに肩身の狭い思いをすることでしょう。
そうなると、難民たちが心に思い描くのはイスラム教に理解のあるイスラム系の母国。
難民・移民の母国に政教分離をしないトルコのエルドアン大統領のような指導者がいて「主要政党に投票するな」と言えば、もしかしたら母国の大統領の考えに従う人も少なくないかもしれません。
難民を受け入れた国に増え続けるイスラム教徒。
イスラム教に理解のない移民先と、イスラム教に理解のある母国。
このような要素が混ざり合った結果、難民達の母国であるイスラム教国が海外に住む民を支配し、現在トルコ大統領がドイツに行っているような他国への内政干渉が増えるのではないかと懸念します。
国が個人の信仰や生き方を変えるのは不可能
「郷に入っては郷に従え」という言葉がありますが
トルコ系ドイツ人の例を見てみても、国が個人の信仰や生き方を変えるのは不可能です。
以前ドイツでドイツ語学校に通っていた時
ドイツに20年も住んでいながら、ドイツ語の初心者コースに、当時渡独2ヵ月目の私と一緒に通っているトルコ人のおばちゃんを見たことがあります。
20年ドイツに住んでいても、トルコ人のコミュニティの中ではトルコ語だけで生きていけたらしいです。
このように
移民は変わるのではなく、自分の文化を移民先に持ち込みます。
ドイツでは現在、トルコ系住民統合に失敗したのを基に難民・移民の統合政策を強化しています。
統合政策はドイツ語力の向上やドイツの社会を理解するのには役立つでしょうが
統合政策により難民・移民が出身国のアイデンティティを捨てることは100%ないと言えます。
まとめ
今回の記事をまとめると
- 現在問題になっている難民にはイスラム教徒が多い。
- 少子高齢化が問題となっている国がイスラム系難民を多く受け入れると、自国民は減り続けるのに対しイスラム系住民は増え続ける。
- 非イスラム教国がイスラム教徒に対し理解がなければ、イスラム教徒は母国により一層の信頼を持つようになる。
- イスラム教国は政教分離が行われていない国が多く、結果イスラム教が海外に住む国民に対しても強い影響力を持つようになる。
- しかし、統合政策によって国が個人の信仰や生き方を変えるのは不可能である。
以上のことから
イスラム教徒ではないというアイデンティティを持つ私たちが、イスラム系難民を通じ将来イスラム教に征服されてしまうのではないかという恐怖を感じたという話でした。
今回の記事は「トルコがドイツ内政に干渉」のニュースを読んで感じた私の空想であり、もちろん実際に起こっていることではありません。
イスラム教国が他国の内政に干渉したという今回の件も独裁者が行ったことなので
これが今回のみの例外であってほしいと願うばかりです。
こんな記事を書きましたが、私自身難民受け入れに反対の立場でも、イスラム教徒を憎んでいる訳でもありません。
自分達がやりたくて起こしたわけでもない戦争に巻き込まれて住む家や国を失った人々を保護することは、国際社会において非常に重要なことだし
2年前に起きた難民問題に際し、ドイツがいち早く難民受け入れを行ったことに感動さえしました。
難民受け入れは同じ人間同士助け合うという素晴らしい行為だとは思いますが
その後に必ず問題となる統合政策には限界があると感じます。
自分が生きてきたバックグラウンドを変えることは不可能に近い。
宗教が絡むと、なおさら。
今回記事に書いたことが現実に起こらないためにも、移民受け入れや外国人参政権、また二重国籍などについては十分な考慮が必要だと感じます。
おわり!
*1:トルコ系ドイツ人と言っても①トルコの背景を持つドイツ国籍者②トルコ国籍しか持たない者③ドイツとトルコ両方の国籍を持つ者、と様々です。
*2:参照:Liste türkischer Bevölkerungsanteile nach Staat – Wikipedia