今回の記事では
ドイツの政治システムについて、画像と共に分かりやすく解説していきます。
- 正式名称:ドイツ連邦共和国。「連邦共和国」って何?
- 日本もドイツも「国民主権」
- ドイツ政治システムをものすごく分かりやすく表した図
- 図の左側(国の政府その①)
- 図の右側(地方政府)
- 図の真ん中(国の政府その②)
- まとめ
- 最後に
正式名称:ドイツ連邦共和国。「連邦共和国」って何?
ドイツの政治システムを説明するにあたり
まずは知っておくべき基本知識から。
ドイツの正式名称はドイツ連邦共和国(Bundesrepublik Deutschlandブンデス・レプブリーク・ドイチュラント)と言います。
「後ろの連邦共和国って、なんだよ!」
ってね、なりますよね。
連邦制
連邦(Bund)とは
たくさんの国が集まって1つの国を作っていることを表します。
※イメージ
ドイツの場合
16ある国(=州)が集まり、1つのドイツと言う国を形成している
という点で「連邦制」の国家だということになります。
ドイツでの州の役割は日本で言う都道府県よりも大きく
例えば学校の教育方針や祝日なども、国ではなく州に決める権限があります。
連邦=Bund(ブント)というのはドイツのシステムにとってとても大切な単語で、例えば
Bundesliega(ブンデス・リーガ)=ドイツサッカー1部リーグ
Bundesbank(ブンデス・バンク)=ドイツの日銀
Bundeswehr(ブンデス・ヴェーア)=ドイツ軍
など、Bundが付く単語はたっくさんあります。
というか
ドイツ全土が絡むことになると、大体このBundが単語の頭に付きます。
中には
Bundesausbildungsförderungsgesetzt(ブンデスアオスビルドゥングスフェルデルングスゲゼッツ)
なんてクッソ長い単語も。
ちなみに、「ドイツ連邦奨学金法」という意味です。
共和国
君主や王様を置かず、大統領などを元首とする国のことを「共和国」と言います。
(大統領については後述。)
つまりドイツ連邦共和国は
「16の州が集まって作っている1つの国」
であり
「君主や王様ではなく、大統領を国の長として定めている国」
ということになります。
日本もドイツも「国民主権」
ドイツも日本と同じく「国民主権」を主張する国です。
なんかね、学校で習いましたね。
『主権は国民にあり、政治の中心は国民ですよ~』という考え方。
そして、日本もドイツも「間接民主主義」の考え方を採用しています。
うーん、そんなのもありましたね。
『国民が実際の政治を行うわけではなく、国民が選んだ代表者が政治やりますよ~』
ということですね。
国の主権者である国民が、実際に政治を行う代表者を決めるのが「選挙」というシステムです。
ここまでは、オッケー?
ドイツ政治システムをものすごく分かりやすく表した図
画像元は脚注参照*1
ドイツの政治システムを分かりやすく図にすると、こんな感じになります!
おわり!
、、、、、って見せられても
まあよく分かんないですよね。
ゴチャゴチャしてて見る気が失せるわぁ~。
というわけで
図の左側、右側、真ん中の順に1つずつ説明していきます。
図の左側(国の政府その①)
まずは赤く囲まれた図の左側を、下から順に紹介します。
連邦議会(Bundestag)
連邦議会は、日本で言うところの衆議院です。
連邦議会の議員は、国民により選挙で選ばれます。
今度9月24日にドイツ全土で行われる選挙も、この「連邦議会選挙」です。
連邦議会には630の議席があり、議員の任期は4年です。
(ちなみに、日本の衆議院は475議席、任期4年。)
連邦政府(Bundesregierung)
国民によって選挙で決められた連邦議会(=衆議院)は
連邦首相(Bundeskanzler/-in)を1人選ぶことができます。
連邦首相は、日本での内閣総理大臣に当たります。
現在のドイツ連邦首相は、言わずと知れたアンゲラ・メルケルさんですね。
メルケルさんが現在首相の地位に付いているのは
前回2017年に行われた連邦議会選挙で、メルケルさん率いるCDUという政党が最も多くの議席を獲得したからです。
連邦議会によって選ばれた連邦首相は
連邦大臣(Bundesminister/-innen)を選び
連邦政府を組織することが出来ます。
、、、連邦、ゲシュタルト崩壊。
何にでも連邦付ければいいってもんじゃないでしょうが。
連邦政府とは、日本で言う内閣に当たります。
ドイツ内閣のシステムを、日本風に置き換えて説明すると
「衆議院が選んだ内閣総理大臣は、大臣を選び内閣を組織する。」
ということです。
つまり
図の左側の連邦議会(=衆議院)と連邦政府(=内閣)のシステムは、日本と全く同じ。
あまりの「連邦」の多さに気が狂いそうになりましたが、意外と覚えやすいです。
図の右側(地方政府)
今度は図の右側、州に関しての話になります。
「え!?州とか政治に関係ないだろ!」と思われるかもしれませんが
ここ説明しないと、図の真ん中説明できない。
というわけで、どうぞお付き合いください。
州議会(Landtag)
州議会は、日本で言うところの都議会・道議会・府議会・県議会に当たります。
州議会の議員も、国民により選挙で選ばれます。
州議会の議席数は州により様々で、任期は4~5年です。
州政府(Landesregierungen)
州首相(Ministerpräsident)は、日本での都知事・道知事・府知事・県知事当たります。
日本だと都知事なども国民による選挙で選ばれますが
ドイツでは、州首相は、州議会によって選ばれます。
州議会に選ばれた州首相は
州官僚・大臣(Landesminister/-innen)を選び
州政府を組織することが出来ます。
うーん。
州、ゲシュタルト崩壊。
なんなの、もう。
「州政府」という概念は日本にはありませんが
無理くり説明すると州政府=州バージョンの内閣ということになります。
また、日本の地方行政(都道府県)に大臣はいませんが
ドイツの地方行政(州)では、州首相を補佐するための、州大臣(または州官僚)が各々の分野で選ばれます。
つまり
ドイツの地方行政(州)の政治システムも、日本の衆議院と内閣、また図の左側(ドイツの連邦議会と連邦政府)の関係と全く同じ
ということになります。
いえーい、ちゃんとついてきてる?
図の真ん中(国の政府その②)
州に関する説明が終わったところで、また国の政治に戻ります。
最後に、図の真ん中についての説明です。
この図の真ん中の部分が、日本の政治システムとはだいぶ違います。
連邦参議院
連邦参議院は、日本の参議院に当たります。
まぁ名前からね、何となく想像できますね。
ドイツは日本と同じ二院制で
連邦参議院は、連邦議会(=衆議院)と一緒に立法機関として活動しています。
、、、、、が。
連邦参議院は、日本の参議院とは議員の質が全く違います。
ドイツ連邦参議院の議員は
国民から直接選ばれるわけではなく、ドイツにある16州の政府の代表者で構成されています。
16の州政府の代表者で構成される連邦参議院の主な仕事は
州政府の意見を国政に反映させることです。
16ある州政府の代表者が参加して行われるのが連邦参議院なので、議席や任期といった概念はありません。
連邦大統領 (Bundespräsident)
図の真ん中の一番上にある、「連邦大統領」。
アップ。
写真は、2017年3月までドイツ大統領だったヨアヒム・ガウク氏。
「ドイツには首相がいるのに大統領もいるの?」
と思われるかもしれませんが
ドイツの連邦大統領は、例えばアメリカの大統領とは全く異なる存在です。
ドイツの連邦大統領は国の元首=ドイツを代表する人物です。
行政には参加しませんし、中立を守り、いかなる政党にも傾倒してはいけません。
役職名は大統領ですが
どちらかと言うと日本の天皇に近い存在となります。
連邦大統領の普段の仕事も
法案の署名や連邦首相の任命、また国内外の各種行事に参加など、天皇と似たところが多いです。
また天皇同様、任期中は逮捕されないという「不逮捕特権」を持ちます。
日本の天皇と連邦大統領は立場的には似ていますが、大きな違いと言えば
連邦大統領は選挙権を持つ40歳以上のドイツ国民であれば誰でもなることが出来るという点です。
「平凡なドイツ国民だった私が、ある日突然連邦大統領に!?」
なんていう魔法少女的展開もあるわけです。
連邦大統領になるとベルリン市内にあるベルビュー宮殿に住むことができたり
© Raimond Spekking / CC BY-SA 4.0
防弾装甲の公用車を使うことができたり
退任後も毎月1万7500ユーロ(約232万円)の終身報酬が受け取れたりします。
(ちなみに、連邦大統領の任期は5年。)
えっ、うらやましい、、、!
40歳以上のドイツ国民なら誰でも連邦大統領になる資格があるとはいえ
もちろんそれなりの人が選ばれます。
誰でもなれると言えど、誰でもなれるわけではない。
その連邦大統領を選ぶのが、次に紹介する連邦会議の仕事です。
連邦会議(Bundesversammlung)
最後の項目。連邦会議。
連邦議会じゃなくて、連邦会議です。
ややこしい、、、。
連邦会議の仕事と言えば
連邦大統領を決めること。
以上。
つまり連邦会議は、連邦大統領を選ぶためだけにある機関です。
日本にはない機関ですね。
連邦会議は、連邦大統領を決めたら
あとは鼻でもほじってればよろしい。
、、、という事はもちろんありません。
連邦会議は
5年に1回、連邦大統領を選ぶ時にだけ集まります。
連邦会議のメンバーは
連邦議会(衆議院)と州議会(16州政府からの代表者)から半数ずつで構成されます。
まとめ
ドイツは16州から成り、大統領を元首とする「連邦共和国」で
日本と同様「国民主権」と「間接民主主義」の考え方を採用しています。
- 連邦政府(Bundesregierung)=内閣
連邦議会に選ばれた連邦首相(Bundeskanzler/-in)と、連邦首相が選んだ連邦大臣(Bundesminister/-innen)から成る。 - 連邦議会(Bundestag)=衆議院
国民によって選挙で選ばれる。
議席630、任期4年。 - 連邦参議院(Bundesrat)=参議院
ドイツにある16州の政府の代表者で構成されている。
議席や任期の概念はない。
- 州議会(Landtag)=県議会
国民によって選挙で選ばれる。
議席は州により様々、任期4~5年。 - 州政府(Landesregierungen)=内閣の州バージョン
州議会に選ばれた州首相(Ministerpräsident=県知事)と、州首相が選んだ州官僚・大臣(Landesminister/-innen)から成る。 - 連邦会議(Bundesversammlung)
連邦議会と州議会のメンバーから成る。
連邦大統領を決めるために5年に1回開催される。 - 連邦大統領(Bundespräsident)=天皇
選挙権を持つ40歳以上のドイツ国民の中から、連邦会議が選ぶ。
任期は5年。
最後に
今回の記事では
ドイツの政治システムについて、画像と共に分かりやすく解説しました。
どうですか?
分かりやすかったですか?
え?
よく分からなかった??
、、、、、、、、、、、。
まぁね、言葉が違うのでなかなか頭に入ってきませんが
政治システム全体としては、日本のものと非常によく似ています。
大きく違うのは
「地方行政(州)の権限が強い」ということと
「天皇の代わりに大統領がいる」ことでしょうか。
ドイツの政治システムを知ることは、ドイツ関連のニュースを見る時に役に立つし
またドイツに永住したい人にとって、この記事の内容は統合講座で必ず取り扱われる内容なので、知っていて損はありません。
おわり!
*1: 画像元情報:
- 連邦首相(アンゲラ・メルケル)
Müller / MSC [CC BY 3.0 de (http://creativecommons.org/licenses/by/3.0/de/deed.en)], via Wikimedia Commons - 連邦内閣、連邦議会
By Tobias Koch (OTRS) [CC BY-SA 3.0 de (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/de/deed.en)], via Wikimedia Commons - 連邦大統領(ヨアヒム・ガウク)
Kleinschmidt / MSC [CC BY 3.0 de (http://creativecommons.org/licenses/by/3.0/de/deed.en)], via Wikimedia Commons - 連邦会議
Bundesarchiv, B 145 Bild-F001946-0009 / Brodde / CC-BY-SA 3.0 [CC BY-SA 3.0 de (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/de/deed.en)], via Wikimedia Commons - 連邦参議院
By The Government of Germany [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html) or CC-BY-SA-3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/)], via Wikimedia Commons - 州首相(オラフ・ショルツ)
Olaf Kosinsky [CC BY-SA 3.0 de (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/de/deed.en)], via Wikimedia Commons - 州官僚・大臣
https://www.berlin.de/sen/wirtschaft/wirtschaft/europa-und-internationales/landesstelle-fuer-entwicklungszusammenarbeit/aktuelles/